私の中ですっかり定番になりつつある半期に一度の選書をやっていきます。
2023年下半期のベスト本を10冊紹介します
選書にちょっぴり苦戦した下半期。
なぜなら読んだ本の数が少ないから。
9月は1冊。11月は2冊。
11月は単に1冊に時間をかけただけなんだけど、9月は読書する気力がなかったという…
まぁ人生そんな時もありますね。
それではいきます。
1.『精霊の守り人』上橋菜穂子
舞台となるのは、異界と人の世界が交錯する世界 ── 。
腕ききの女用心棒・バルサはある日、川におちた新ヨゴ皇国の第二皇子・チャグムを助ける。
チャグムは、その身に得体の知れない”おそろしいモノ”を宿したため、「威信に傷がつく」ことをおそれる父、帝によって暗殺されそうになっていたのだ。
バルサはチャグムの母・二ノ妃から、チャグムを守るよう依頼を受ける。
児童書として描かれたとは思えないほどクオリティの高いファンタジー小説。
しかも主人公は30歳の女用心棒。かっこよすぎる。
人の世界と異界が重なるシーンが恐ろしくもあり幻想的でもあります。
大人が読んでも十二分に楽しめるシリーズです。
2.『川のほとりに立つ者は』寺地はるな
カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。
松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。
「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。
装丁が美しくて手に取ってしまった一冊。
忙しない日常に埋もれて通り過ぎてしまう大事なものを、掘り起こして目の前に突きつけてくるような作品でした。
“川のほとりに立つ者は 水底に沈む石の数を知り得ない”
この言葉の重さがのしかかってきます。
他人を理解することなんてできないけれど、
目の前にいる大切な人のことくらいは理解するための努力をしたいです。
3.『ミカエルの鼓動』柚月裕子
この者は、神か、悪魔か――。
気鋭の著者が、医療の在り方、命の意味を問う感動巨編。
大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。
そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。
あるとき、難病の少年の治療方針をめぐって、二人は対立。
「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。
そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。
大学病院の闇を暴こうとする記者は、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫る。
天才心臓外科医の正義と葛藤を描く。
最先端技術を巡る医療小説。古臭い昭和の空気を残す大学病院の裏側。
私の好きな要素が詰まった一冊。
「理想と現実」「目的と手段」「プライドと信念」。
様々な思いが交錯し、物事がなかなか思うように進まない。
そしてそこでは、患者の命が天秤にかけられている。
綺麗事だけでは済まされない現実。
ぜひ読んでほしいです。
4.『月の立つ林で』青山美智子
長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。
つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。
月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。
2023年本屋大賞ノミネート作品。
質の高い群像劇はなぜこんなにも面白いのか。
心の奥底にじんわりと染み込むような一冊。
人と人は、知らないところでもひっそりと繋がっている。
生きていると辛いことも悲しいこともたくさんあるけど、心が温まることも必ずあって、その積み重ねが人生なんだなと思えるようになる。
5.『777 トリプルセブン』伊坂幸太郎
そのホテルを訪れたのは、逃走中の不幸な彼女と、不運な殺し屋。そして――
累計300万部突破、殺し屋シリーズ書き下ろし最新作
『マリアビートル』から数年後、物騒な奴らは何度でも!
やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだった――。
時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる……。
そのホテルには、物騒な奴らが群れをなす!
群像劇の最高峰といえば私の中で伊坂幸太郎さん!
登場人物がこんなにもたくさん死ぬのに読んでて楽しいという謎の感想を抱いてしまうのは伊坂幸太郎の作品特有のものだと思う。
お気に入りの「殺し屋シリーズ」最新刊。
どこまでも不運な七尾。(殺し屋)界隈からみるとどこまでも幸運な七尾。
見方次第で180度評価が変わる。
「隣の芝生は青い」とよく言うけれど、人生なんてこんなものかもね。
6.『堕天使拷問刑』飛鳥部勝則
両親を事故で亡くし、母方の実家に引き取られた中学1年生の如月タクマ。
が、そこではかつて魔術崇拝者の祖父が密室の蔵で怪死した事件が起きていた。
さらに数年前、祖父と町長の座をめぐり争っていた一族の女三人を襲った斬首事件。
二つの異常な死は、祖父が召喚した悪魔の仕業だと囁かれていた。
そんな呪われた町で、タクマは「月へ行きたい」と呟く少女、江留美麗に惹かれた。
残虐な斬首事件が再び起こるとも知らず……
絶版本がついに復刊と話題になっていたので試しに購入してみた一冊。
何も知らずにとりあえず読んでみたのだけど、コアなファンがいることに納得の内容でした。
ページ数も多く上下に段組みと、かなりボリュームのある物語。
奇書と噂されるのも理解できる闇鍋感。
山村に古くから残る因習。悪魔崇拝。連続して起こる殺人事件にまつわるミステリー。集団心理による扇動。遺産相続。中学生男子のささやかな恋愛。
どんな話だよ!って感じですが、マニアックな世界に没入したい人におすすめの一冊です。
7.『満願』米澤穂信
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。
鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴(ざくろ)」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。
第27回山本周五郎賞受賞作。
史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。
2014年の「ミステリが読みたい!」(早川書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(文藝春秋)、「このミステリーがすごい!」(宝島社)において国内部門1位。
本年最後にめちゃくちゃ驚かされた一冊。
私は小説といえばとにかく長編を読むのが好きで、短編の楽しみ方がイマイチよくわからない人間なのだけど(多分人として繊細さが足りてない)、短編集なのに前のめりで面白く読めました。
過不足なく面白い文章とはこういうものを指すのだな、と。
重厚感のある文章で人の後ろ暗い部分を描き出していて、背筋が寒くなりました。
2024年は米澤穂信さんの他の小説も読みたい。
8.『パンドラ 猟奇犯罪検視官 石上妙子』内藤了
「猟奇犯罪捜査班」の“死神女史”として、藤堂比奈子らを助ける検死官・石上妙子。
彼女がまだ大学院生だったとき、その事件は起きた。
法医学部の教授のもとで、妙子が検死を担当した少女。
彼女は自殺と思われたが、「遺書」の一部が不思議なところから発見された。
妙子は違和感を持つなか、十代の少女の連続失踪事件が発生していることを、新聞と週刊誌の記事で知る。
刑事一年目の厚田巌夫と話すうち、別の女性の変死体のことが分かり、「自殺」に疑念を持つ妙子。
そして大学では、英国から招聘された法医昆虫学者である、サー・ジョージが研究を開始、妙子がサポートをすることになった。
彼の研究が犯罪を解き明かす鍵になるのではと考えた妙子だったが……。
2023年下半期にせっせと読み込んでいた「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズ」のスピンオフ作品。
本編を読んでない人でも楽しめるので、シリーズを代表してこの1作をランクインしてみた。
何しろ私が本編ヒロインよりもこちらのヒロイン石上妙子の方が好きでして、過酷な女性の半生が詰まった一冊です。
同じ女として、想像しただけでもトラウマになりそうな…
それでも強く生き、やるべきことをやり遂げる彼女を尊敬します。
9.『桶川ストーカー殺人事件-遺言』清水潔
ここからは小説ではなくノンフィクションです。
ひとりの週刊誌記者が、殺人犯を捜し当て、警察の腐敗を暴いた……。
埼玉県の桶川駅前で白昼起こった女子大生猪野詩織さん殺害事件。
彼女の悲痛な「遺言」は、迷宮入りが囁かれる中、警察とマスコミにより歪められるかに見えた。
だがその遺言を信じ、執念の取材を続けた記者が辿り着いた意外な事件の深層、警察の闇とは。
「記者の教科書」と絶賛された、事件ノンフィクションの金字塔!
ジャーナリズムとは何か。
警察という組織はあてにならず、マスコミは民衆受けを狙って事実を脚色して報道する。
彼らには、「事件の解決」よりも大切なことがある。
全部が全部、というわけではないけれど、世の中の嫌な部分が垣間見える。
民間人一人の命なんて、巨大な社会の中では大したものではないんだと改めて突きつけられる。
けれどそんな中でも、真実を追いかける人もいる。
もう起こってしまった事件はどうしようもないけれど、それでも事件の真相が多くの人に届けばいいと願う。
10.『母という呪縛 娘という牢獄』齊藤彩
深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、
「モンスターを倒した。これで一安心だ。」
と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。
2018年3月10日、土曜日の昼下がり。
滋賀県、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見された。遺体は激しく腐敗して悪臭を放っており、多数のトンビが群がっているところを、通りかかった住民が目に止めたのである。
母と娘――20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。
公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。
なんだかもうやりきれなくなる。
人を殺すことは罪だけど、あかりさんが悪人かと問われればNOとしか言えない。
人権を、人生を奪われ続けたあかりさんの半生。
母と娘の絆は、もはや呪いでしかない。
「こどものため」を免罪符にしてはならない。
少しずつエスカレートしていく行動に、本人は絶対気づけない。
子育てする前に必ず読むべき一冊。
おまけ『再生(仮)』緒方恵美
その時はいっぱいいっぱいだったけど、こうしたらもっとラクだったとか、死にそうだったけど、結果的に選択したことは正しかったとか。
折しも、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ完結編の収録が終わり、ひとつ、大きな荷をおろせそうなタイミング。
膨大な私の「トライ&エラー」。それを越えた先に拡がった世界の話。
それをお伝えすることで、もしかしたら、誰かのお役に立てるのかもしれない。
僕はここにいてもいいのかもしれない。
僕はここにいてもいいんだ!
大人気声優、緒方恵美さんの自伝本。
これがめちゃくちゃ良かったのだけど、「おまけ」に位置付けたのには理由がありまして。
私この本、Audible(オーディブル)で聴いたんですよ。
なんと緒方恵美さん御本人が朗読してくださっていて、それが最高に良かったのです。
聴いてて泣きそうになりました(色んな意味で)。
本書の面白さを200%引き出してくれており、文字だけの「本」として読んだ時に感じる「面白さ」がどのくらいなのか全くわからなくなってしまいましたw
多分文字だけでもめちゃくちゃよいはずなのですが。
ぜひともAudible(オーディブル)で体験してほしい一冊です。
緒方恵美さんの声最高すぎる…
『再生(仮)』緒方恵美 Audible(オーディブル)版を聴く
2023年下半期のまとめ
2023年下半期に読んだ本は41冊。
2023年1年間で読んだ本は110冊でした。
2022年に読んだ本は80冊だったので、30冊ほど増えている。
会社員をしながらの私の生活では、数量としてはこれくらいが限界かなぁという感じがしています。
読める本は年間100冊前後。
なるべく自分にとって有意義な本をチョイスしていきたいです。
本は選ぶのも楽しいので。
2023年にハマっていたシリーズものは「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズ」となりました。
8年越しの読破リベンジとなりましたが最高に面白かったです。
やはり「シリーズ一気読み」は物語を濃いめに満喫できます。
2024年もどんな本に出会えるか楽しみです。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れ様でした!