※本記事にはネタバレも含みますのでご注意ください※
人が自ら死を望む時、
それほど絶望しても尚、
死後に何かを残したいと思うのだろうか。
自殺志願者が集う自殺幇助サイトから派生する事件
都内の霊園で、腐乱自殺死体が爆発するという事件が起こる。ネットにアップされていた死体の動画には、なぜか「周期ゼミ」というタイトルが付けられていた。それを皮切りに続々と発生する異常な自殺事件。捜査に乗り出した八王子西署の堂々比奈子ら「猟奇犯罪捜査班」は、自殺志願者が集うサイトがあることを突き止める。その背後には「AID」という存在が関係しているらしいのだが…。
内藤了さんの「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズ」の第三作目の本書。
テーマは「命の取り扱い」といったところでしょうか。
自ら命を断つことの是非について。
そしてそれが周囲へどんな影響を及ぼすのか。
“偽善”の範囲に収まりきらない比奈子ちゃんの行動に、少し涙ぐんでしまった私がいます。
「助けて!」と。
たったその一言を発する行動の難しさよ…
主な登場人物
- 藤堂比奈子 八王子西署刑事組織犯罪対策課の新人刑事。長野出身。
- 厚田巌夫 比奈子の上司の警部補。通称【ガンさん】
- 東海林恭久 比奈子の先輩。体育会系刑事。
- 三木健 八王子西署のオタク鑑識官
- 石上妙子 東大法医学部教授。検死官。通称【死神女史】
猟奇犯罪捜査班(非公式)の面々(一部)。
登場人物のキャラクターが全員濃いめなのがとてもいい。
猟奇殺人を扱うチームの話なのに、必要以上に深刻になり過ぎないのはキャラクター効果だと思われます。
今回はイメケン刑事・倉島さんの恋人「忍(しのぶ)」の初登場回なのがアツい。
三木の彼女の麗華さんはSAOヲタだった…!
私が『AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』を初めて読んだのが2017年。
今回再読したのが2023年。
初読の時には気に留まらなかったネタが、再読の今回めっちゃ気になりました。
今回大活躍した麗華さん、まさかのソードアート・オンラインのアスナ推しだった…w
2017年の私はSAOを知らなかったのでスルーしたし記憶にも残らなかったのですが、
この6年の間に私はSAOのアニメにドハマりした時期がありましたので、
今回はそのネタがめっちゃ引っかかりました。
麗華さんの好感度、私の中で一気に上がるw
自分がいつか死ぬ時、それはどんな死に方なのだろうかと考えたりする
自分が最後にどんな風に死ぬのか、考えたことはありますか?
最近読んだ本だと、夕木春央さんの『方舟』にもそんなネタが出てきたな。
私は以前からから「高いところから落ちて死ぬ」のと(高所恐怖症気味)
「生きたまま焼かれて死ぬ」のだけは勘弁してほしいなと思っていました。
想像しただけで恐ろしすぎます。
AIDを読んで思ったのは、夏場に死んで誰にも発見されず腐乱死体になるのも結構嫌だな…、です。
行く末は中々えげつない。
自分自身が辛い思いをするというよりは、後処理をする人たちに申し訳無さすぎる…
浅はかながら私自身も、比奈子ちゃんのように練炭自殺や排ガス自殺は比較的ラクに死ねる部類のものだと思っていました。
死神女史曰く、そんな事はないようですね。
「眠ってるうちに死んでやろうなんて甘い考えで睡眠薬飲んで、排気ガスを引き込んでもさ、濃度によっちゃ苦しさのあまり目が覚めて、逃げようとしても身体は動かず、結局悶絶しながら死んだってパターン。
(中略)警察もマスコミも詳しい報道はしないから、楽に死ねると勘違いする人間は多いのさ。」
「体が動かないからそう見えるだけで、金縛り状態でゆっくり窒息するのが、どんな気持ちか考えてごらん。
生きるも地獄、死ぬも地獄ってね。
眠るように死にたかったら天寿を全うするしかないんだよ。
歳食って、耳が遠くなったり、感覚が鈍くなったりしてさ、自然に身体が衰えて死んでいく場合はたぶん、苦しくも何ともないんだと思う。
生々しい命を無理に終わらそうと思ったら、楽になんか死ねるわけないよ。
生き物ってのは本人の意志とは関わりなく、とことん生きようと身体機能が動くんだから」
死神女史の説得力、物凄い。
そう考えると、溺れて死ぬのも嫌だな…と。
しかし実際のところ、死に方なんて選べるものではなくて、
けれど唯一選べるのが「自殺」なんだと思うと、少し複雑な気分になります。
個人的には自殺も個人の自由だと思っている派ではありますが、
自分の大切な人に自殺してほしいかといえばもちろんNOだし、
現状の私もその選択肢を選ぶ予定はありません。
だからこそ、実際にその選択肢を選んだ人がどれほど追い詰められているのか…
想像を絶するものがあります。
比奈子ちゃんのように、往来で「助けて!」と代わりに叫んでくれる人がいたら。
それが救いになる人もきっといるのでしょうね。
せめて自分の大切な人のためだけにでも、
それくらいのことができる自分でありたいと思いました。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れ様でした!
※この記事は『AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』の再読にあたり、2017/03/05のブログ記事を再編したものです※