エッセイ
帰宅すると、22時をとうに過ぎていた。 床に座り込んだ私は立ち上がる気力も失って、自分の足先を眺めた。 テーピングを剥がす手が震え、中指の爪を見るとゾワリと鳥肌が立つ。 爪が横に裂けて、上側が指から離れそうになっている。 テーピングと絆創膏まみ…
昨日の夕方、あまりにもショックすぎるニュースが飛び込んできた。 news.ntv.co.jp 何がショックなのかといえば、自殺した芦原妃名子さんは私が学生時代から大好きな漫画家さんなのだ。 実家の私の部屋の本棚には、芦原妃名子さんの古い漫画本がずらりと並ん…
ギリギリの時間に会場の扉をくぐると、 当たり前のようにみんなが着席している。 お行儀のよく揃ったその背中たちは、 95%以上が真っ黒だった。 (葬式かよ…) あまりにも予想通りすぎたその光景にうんざりして、 心の中で悪態をついた。 学生時代にお勉強…
お題「高校生に戻ったらしたいこと」 とっくに大人になってしまっているそこのあなた。 突然高校生に戻ってしまったら……何する?? 高校生にタイムリープ 1.もっと親に反抗したい 2.親のお金で車の免許取りたい 3.バレエを習いたい 4.もっと本を読みたい 5.…
きょうだい児とは、病気や障害を抱える人を兄弟姉妹にもつ人のことを指す。 私には弟がいて、弟は小学校低学年の頃にある病気の確定診断を受けた。 私の弟は“病気”だった。“普通”ではなかった。 病気の弟が私を“きょうだい児”にし、私も“普通”ではなくなって…
厳密には義母ではない。 他人だ。 私にとって義母のような存在。 パートナーの母親。 長く連れ添っていても籍は入れていないので、戸籍上は他人。 他人以上、親子未満 義母との出会い 田舎から届く荷物に添えられた手紙 他人以上、親子未満 世間の“嫁姑問題”…
土曜日の待合室はその様相がガラリと変わる。 平日は暇そうな老人たちばかりを相手にしているが、土曜日は30代~50代の働き盛りの患者がメインとなるからだ。 連休前のとある週末、私の1日。 仕事 美容院 カフェ 道すがら ブックオフへ 帰宅 連休前のとある…
『警視庁の者ですが』 そう言って男は、警察手帳を開いて見せてきた。 『ご協力頂きたいことがありまして…』 思わず顔を見上げるくらいには、背の高い男だった。 年は私と同じくらいか、少し若いくらいかも知れない。最近流行りの俳優みたいな顔をしている。…
最近ふと思い出したことがある。 昔、彼に言われた言葉。 『例えば君は、美しいものを見たときに、それがなぜ美しいのか理屈で説明できる? 俺はそれができる。そうでなければ、この仕事は出来ないからね』 多分もう、10年近く前の話だ。 言われた当時、私に…
限られた自分の時間に多くのことを詰め込みすぎて、 ある時ふと、物凄い疲労感に襲われることがある。 何も彼もが手につかなくなって、 持っている一切を手放したくなる。 雑踏の中立ち止まってみて周りを見渡すと、そこは知らない人ばかり。 知らない表情で…