Daydream

全ては泡沫のごとく、ただ溶けて消えていくだけ。。。

カルト宗教の集団自殺事件の裏側『名探偵のいけにえ-人民教会殺人事件-』白井智之


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みなさま、カルト宗教はお好きですか??

本書は現実に起こった出来事、カルト宗教における集団自殺事件を元にした小説です。

カルト宗教の集団自殺事件の裏で何が起こったのか

本書、『名探偵のいけにえ』のサブタイトルは、『人民教会殺人事件』です。

本のタイトルだけ見るとよくあるミステリー小説かな?って感じですが、そこはやっぱり白井智之さん。

ミステリー要素はもちろんあるけれど、よくある感じでは全然ないw

 

そもそも私がこの小説を読んだのは、「実際に起こった事件(カルト宗教の集団自殺)」をテーマに書かれていることを知ったからでした。

まだ『名探偵のいけにえ』を未読の方で、読んでみようかな?と思った人は私のブログなんて読まなくていいので小説の方をぜひ読んでみてください。

以下は「多少のネタバレ問題無し」派の人向けです。

カルト宗教内で何が起こったのか

そもそも「カルト宗教」は、私が惹かれるワードの一つです。

私は「カルト宗教やスピリチュアルに傾倒する人たちを観察するのが好き」という悪趣味を持っています。

今回『名探偵のいけにえ』で取り上げられている事件は、現実では「人民寺院集団自殺事件」とされています。

私はとりあえず、現実の事件について調べることなくいきなり小説を読み始めました。

個人的にはそれで正解だったような気がしています。

 

結末は冒頭に描かれています。

900人以上のカルト宗教信者たちが、教祖共々集団自決するのです。

世間とは隔絶された密林を切り拓き、自分たちで開拓した集落での出来事でした。

 

その、もう終わってしまった出来事。

決まってしまっている結末への、短いようで長い長い道中が暗澹としていて…

まるで終わらない悪夢を見させられているような、それこそ抜け出せない密林の中を彷徨うような、最後には絶望に近い虚無感と、疲労感ばかりが残るような物語だったのです。

 

悪夢にうなされ、

はっと目覚め、

安堵したのも束の間、

今もまだ悪夢の続きでした、

みたいな感じです。

さすが白井智之さんの小説。前にもあったぞ、こんなの。

カルト宗教集団自殺事件の表と裏

私はそこでふと思うのです。

この小説は現実の事件をモチーフにしているらしいけれど、

どのくらい実在の事件に忠実なんだろう…??と。

読後の私は、「モチーフと言ってもかなり脚色してるんだろうな…」と思ったものです。

「なんか見事に小説(フィクション)っぽい展開だし。白井智之風にかなり色つけてるんだろうなぁ…」なんて。

小説の余韻を引きずったまま、私は当然の手順で今度は実存した事件について調べ始めました。

 

そしてしばし呆然となる。

 

もちろん事件の裏側は白井智之さんが色を付けているわけですが、

表向きに起こった出来事はほぼ現実そのままだったのです。

フィクションという言葉を鼻で笑ってしまいそうになるくらい、実際の出来事をほぼそのまま再現していました。

教祖も、僻地で開拓された集落も、パビリオンでの集会も、グレープ味のプレーバーエイドも、視察にきたどこぞの議員も、集団自決した900人超えの信者たちも、

すべて実際に存在し、書かれている通りの結末を迎えていたのです。

事実は小説より奇なりと言いますけれど、少し変わった角度からそれを実感しました。

白井智之さんが付け足したのは「探偵」という色で、

「それだけ」ど言ってしまえばそれだけですし、

それが最大のスパイスと言えば全くもってその通りで、

あまりにもパンチの効いた味付けだったのです。

 

実存した事件を調べていると、

それがあまりにも小説の内容をなぞっているようで、(本当は小説が事件をなぞっているのだけど)

しかも使われている名詞もかなり似通っているせいで違和感が余計に少なく、

段々と「本当は裏で探偵も実存したのではないか?」なんて錯覚しそうになりました。

事件に関する記事を読んでいるのか、

小説を読んでいるのか、

頭が混乱するのです。

 

人民教会=人民寺院

ジム・ジョーデン=ジム・ジョーンズ

ジョーダンタウン=ジョーンズタウン

レオ・ライランド=レオ・ライアン

 

名詞のもじり方がナチュラルすぎるw

 

そのうえ現実の集団自決に関しては、肉声のテープが残っています。

ジム・ジョーンズが信者たちに言い聞かせるように話す声、子供たちの絶叫、信者の熱弁。

それはリアリティではなくリアルそのものなのですが、

そのテープを聞いていると小説のリアリティまでもが増してくるのです。

私の中でジム・ジョーンズの声は、そのままジム・ジョーデンの声となりました。

パビリオンでの集会は、なるほどこの空気感だったのか、と。

 

読書体験が読書の範囲だけでは収まらない、なんだか不思議な体験でした。

 

読後に余韻を引きずっていた私は冒頭に戻って読み直しをしたのですが、「私は最初から勘違いをしていたんだな」と思い至りました。

表紙やタイトルも含めて、全ては本書を手に取った時から始まっていたのか、と。

白井智之さん、読むたびに印象深いです。

そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。

お疲れ様でした!

 

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