乙女の肌には黄金の首飾り
その胸には
偽りと、甘き言葉、不実の性…
神々の使者はさらに乙女に声を与え
その女をパンドラと名付けた
「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズ」のスピンオフ作品、『パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子』を読んだら想像以上に好きな感じだったので記録を残しておきます。
『パンドラ 猟奇犯罪検視官・石上妙子』
本作を読んで私が驚きつつも素晴らしいと思ったポイントは、スピンオフなのに本編とは独立した構成になっていることです。
本編のヒロインである藤堂比奈子の登場は一切なし。
ヒロインはあくまで石上妙子であり、しかも大学院生。若い!
当時の彼女と、その周りで起こった事件の物語。
とは言え本編を読んでからこちらを読むと、最初からキャラ愛が強い状態で物語に入れるのでそれが最大のメリットかも。
【あらすじ】パンドラの猟奇殺人事件
東京大学法医学部博士課程を学ぶ大学院生の石上妙子(27歳)。
死因究明室での司法解剖で、小さな違和感をおぼえる。
遺書が書かれていたとされる紙の欠片が、口腔内に付着していたのだ。
遺体は17歳女性で、死後一ヶ月程度。野生動物に食い荒らされていて、バラバラになっていた。
些末なことと思いつつも死体検案書の「その他欄」に事実として書き加えることを、両角教授に許可を得る。
当初「自殺の可能性が高い」とされていたその遺体を発端に、連続少女失踪事件を追うことになる。
まだ大学院生で27歳の死神女史が、始めて猟奇事件に巻き込まれる記念すべき一冊です。
そして本編読者にとって非常に興味を惹かれるのが、この事件をキッカケに「ガンさん」や「サー・ジョージ」と出会うことです。
当たり前ですが彼らも若い。本編では中年なのに。
過去を覗き見しているみたいでドキドキしますw
本編『ONE』で、死神女史とジョージがしていた色っぽいやり取りが何を再現していたのか。
事件を追う面白さとは別の楽しみも満載です。
ヒロインとしての石上妙子
本編でのヒロイン・藤堂比奈子とは随分と趣が違います。
比奈子は年齢が若いだけではなく、中身も幼さが垣間見え、それ故に純粋で真っ直ぐです。
関わる事件は猟奇犯罪ばかりで、殺伐とした警察組織内の物語ですから、
その中で「光」のような存在、正統派ヒロインといったところ。
対して石上妙子は実年齢だけでなく、明らかに精神的にも比奈子より大人で現実を見ている。
眼の前の事件だけでなく、自分の人生も考えながら日々を過ごしています。
本編においても彼女のセリフがなぜ一々深みがあるのか。
『パンドラ』を読んだらその理由が少しわかった気がします。
監察医としてだけでなく、女性としても人生が壮絶すぎる…
歳を重ねた彼女が強く魅力的な理由を垣間見た気がしました。
尚、当たり前ですがこの頃はまだ「死神女史」なんで通り名はついていませんw
ヘビースモーカーは若かりし頃から
本編以上にめちゃくちゃタバコ吸う死神女史。
しかも美味しそうに…
時代もあるとは思う。
それはわかるんだけど、禁煙者にはちょっと辛いかもw
美味しそうすぎてこっちまで吸いたくなります。
「肺に煙草の煙が入ったときの映像をご覧になるといいわ。ニコチンのせいで肺胞が痙攣するんですよ。それはもう、恐ろしいくらいに。あれを見て煙草をやめた先生は多いのよ」
煙を吐きながら妙子は言う。それでもやっぱり、解剖後の一服はやめられない。
喫煙室で新米刑事の厚田に投げかけたセリフ。
私の心にも刻んでおきます。
本作は死神女史が始めて事件の捜査に関わる物語であり、
「猟奇犯罪捜査班」発足の前日譚とも言える物語。
本編を読んでいる人にも読んでいない人にもおすすめです。
そして『パンドラ』を読んだあとに本編の『AID』の冒頭を読み直すと泣けてきます。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れ様でした!