「食事に気を使う」というフレーズはよく聞くけれど、
「飲み物に気を使う」というフレーズはあまり聞いたことがありません。
だからこそのこの一冊。
飲み物に関するアレコレについて、学んでみるいい機会ということで。
科学的根拠に基づく「飲み物」について
皆様は普段、どんな飲み物を飲んでいるでしょうか。
私が自宅で1番飲むのは水です。
一言で言ってしまえば「水」。
しかし本書を読むと、水と言っても多種多様な種類があることがわかります。
厳密に言うと、私が1番飲むのは「水道水をポット型浄水器でろ過したもの」です。
次点が買い置きしているミネラルウォーター(軟水)です。
炭酸水も時々飲みます。
無意識のうちに3種類の水を飲み分けているようですが、本書を読むまではこれらを雑に一括りにし、「水」としか認識していませんでした。
本を一冊読むだけで解像度が一段上がり、もはや別物としてはっきり認識しているのは面白い現象です。
本書では水に限らず、様々な飲み物の詳細が語られています。
成分について分析したり、
陰謀論めいたものを科学的に検証したり、
美味しいお茶の入れ方から、
適切なコーヒーの飲み方や、
世界各国で愛されるアルコール飲料の紹介など。
とにかく「飲み物」に関する情報を幅広くカバーする一冊となっているのです。
本書の目次(の概要)
プロローグ 食前酒
第1章 水(水道水、ミネラルウォーター、浄水ポットの水、炭酸水など)
第2章 ミルク(牛乳、粉ミルク、プロテイン飲料、発酵乳、豆乳など)
第3章 ホットドリンク(紅茶、緑茶、ハーブティー、コーヒー、ココア、麦芽飲料など)
第4章 コールドドリンク(炭酸飲料、フルーツジュース、スムージー、エナジードリンクなど)
第5章 アルコール飲料(ビール、シードル、ワイン、蒸留酒、カクテルなど)
エピローグ 食後酒
ちなみに私はアルコールは飲めないのであまり興味がないですが、
水全般とプロテイン、コーヒー、ココア、コールドドリンク全般は日頃から口にしますので興味津々で読みました。
水道水について
水とは、上記に記載されている飲み物全てのベースとなっているものです。
日本で暮らしていると水道をひねるだけで水が飲めるのは当たり前のようですが、世界的に見るとこれはかなり貴重な設備です。
国土交通省の資料によりますと(2018年の資料)、
世界的に見て、水道水がそのまま飲める国は日本を含めて9カ国。
そのまま飲めるが注意が必要な国と基準を緩めても、わずか21カ国しかありません。
日本の浄水技術素晴らしすぎます。
家庭用の浄水ポットに意味はあるのか
私自身はミネラルウォーターの買い置きもある程度していますが、
それはあくまでも災害用の備蓄目的であり、
日常で飲む水は水道水がほとんどです。
キッチンには浄水ポットのブリタを常に置いていて、ろ過したものを飲用としています。
料理やお茶を作るときなど、沸騰させる場合は水道水を直接使ったりもします。
世界の水事情と比べると、驚くほど安全で便利ですね。
本書によれば、家庭用浄水ポットは塩素とその副産物の除去には特に優れているとのことです。
一方で衛生面には注意が必要で、定期的にポットを洗浄し、フィルターを交換すること。
水を保管したポットは冷蔵庫で保管し、24時間以内に飲み切ることなどを推奨しています。
そして浄水ポットの購入目的が「水から不快な匂いや味を除去すること」であるならば、
“水道水を蓋付きの容器に入れて少し冷やせば同じ効果を得ることができる”と語られています。
“塩素はすぐに全部とんでしまうし、冷えていると味や匂いを感じづらくなる”というのが著者の談です。
しかし個人的には、これには少し疑問が…
“すぐに”とはどれくらいの時間を指すのでしょう?
ネットで調べた感じ、これはちょっと微妙です。
水道水から自然に塩素を抜くには日向で6時間くらいかかるようで、
冷蔵庫のような冷暗所では24時間以上かかりそう?
時間をかけるのはそれだけで手間ですし、うちは冷蔵庫もそこまで大きくないので…
やはりブリタが手軽だなーという結論。
私は有害物質として塩素を毛嫌いしているわけではなく(日本の水道水の水質を信用(盲信?)しているので)、飲む時単に匂いが気になるだけなのです。
著者の主張とは矛盾しますが、気軽な理由だからこそ手軽に済ませたいところなのです。
アルカリイオン水について
アルカリイオン水が健康にいいという話は聞いたことがあります。
血中の酸を中和し、がんや心臓病を予防したり、アンチエイジング効果を謳われていたりもします。
これらを聞き、著者は早速自宅の水道水のpHを測定しました。
著者は興奮しました。
アルカリ性だ!この水を長年飲んできた自分は病気知らずで生きられる!?と。
しかしこれについては科学的(化学的?)にご自身で否定されています。
私たちが飲んだアルカリイオン水は胃で強酸性の胃液と混ざり合う。
その時点で水のアルカリ性は失われるので、健康効果は期待できそうにありません。
もし胃酸を中和しようとするなら大量のアルカリイオン水が必要になります。
そして人間の体内で最もよく見られる酸は二酸化炭素であり、肺はきちんと余分な二酸化炭素を取り除き吐き出させることで体内のpHを維持しているとのこと。
水に含ませたささやかなアルカリに出番なし。
ちなみに似たような記述が酸素水の項目でも記されています。
酸素を吸うのと飲むのでは生理機能の面で極めて大きな違いがあり、肺は効率的に酸素を処理するけれど、腸はそうではない、と。そりゃそうだ。
一日の終りに、もしもうすこし酸素が必要だと感じたのであれば、何度か深呼吸をしよう。ボトル入り酸素水を一本飲むよりも、呼吸を一回する方がはるかに多くの酸素を取り込めるのだから。
ちょっと笑ってしまった。
人体の神秘。
深呼吸大事。
水は水でも世の中には様々な水がある
本書ではこの他にも、電解質添加水や炭酸水、ビタミンウォーターなど、水だけでも多種多様なものが解説されています。
第一章だけでも物凄い情報量…
皆さんも、読めば自分が愛飲している飲み物の実態がわかるかも知れません。
味が好きで嗜好品として飲むのはいいけれど、マーケティングに踊らされて科学的根拠のない効果をあてにするのはよろしくないよーというのが著者の主張です。
どこかで似たようなセリフを聞いたことがあるなぁと思いましたが、不動産業界ですね。
マイホームを買うべきか否か。
マイホームが自分にとって「欲しいもの」なら買う価値がある。資産か負債かで言えば負債だけれど、それは別問題。ってね。
自分の好きなものや欲しい物を明確にしておくのは大切です。
本書を読むにあたり注意点が一つ。
それは、本書が海外書籍の翻訳本であるということです。
著者のアレクシス・ウィレットさんはイギリスで暮らす方であり、
本書に書かれている共通認識的なものは全てイギリスが基準となっています。
常識や、法律や、例えば“水道水”といえばイギリスの水道水を指しているわけで、
うっかり日本の感覚で読んでしまうと違和感がある部分もあるかも知れません。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れ様でした!