まず先に、本書は鬼畜な描写が苦手な人にはおすすめ出来ないことを申し述べておく。
初めての白井智之さん小説
前々から気にはなっていたものの、読むに至っていなかった白井智之さん小説。
ついに手元にやって参りました。2冊。
とりあえず一冊目がこちらのおやすみ人面瘡。
読み始めの早い段階で「独特すぎww」って思ったけど嫌いじゃないこういうの。むしろ好き。
表紙もいい。
ただ、脳瘤ってこんなキレイなイメージじゃないなって思った。もっとグロいの想像してますよ私は。本編読んだ人にならわかるはず。
特殊設定、鬼畜描写満載、そしてなぜか挿し込まれるミステリー要素。
マニアックなジャンルだとは思うけど、中々に贅沢の詰まった一冊です。
【おやすみ人面瘡】の世界観とあらすじ
本書のタイトルにもある【人面瘡】。
これは世界で蔓延している人瘤病の病症を指す。
人瘤病とは、人の顔をした十センチ大の瘤(コブ)ができる奇病のことで、手足や胴体は勿論、顔や陰部に瘤ができることもある。
感染者はおよそ6~7個の瘤を抱えており、その瘤には切れ長の目、潰れた鼻、デコボコの歯と、ウシガエルの出来損ないみたいな顔が浮かんでいる。
そしてこのウィルスの最大の特徴は、脳細胞をコピーすること。
身体にできた瘤たちは、それぞれ顔があり脳の役割も果たす。
それ故に患者は、本来の脳が死んでも生命活動を維持できるようになっている。
きもい。きもすぎる。
自分の身体に自分ではない生き物が寄生しているような感じ?
しかも顔がブサイク。ますます気色悪い。いや、顔がキレイでもきもいけどw
主人公のカブは、人瘤病の女性を集めて性的なサービスを行っている風俗店で働いている。
「三万円払って美女と一回セックスするより、三千円払って人瘤病の女と十回セックスするほうがいいって客はいっぱいいるんだ」
というのが風俗店のマネージャーのセリフ。
人瘤病の患者は知能が低く、安く使い捨てられる。しかしその一方で、特殊な性癖を持つ人達への特殊な高額サービス、裏メニューも存在し、そこで商売を成り立たせていた。
ある日カブは、後輩のジンタと共に、店で使う人瘤病の女性を買い取りに行くのだが、その町で予想外のトラブルに巻き込まれることになる。
ジンタの故郷でもあるその町は、十七年前に人瘤病の感染爆発を起こしていた。
現在では『人瘤病撲滅宣言』を掲げているその町の裏側で、一体何が起こっているのか!?
パニック小説→ミステリー小説→おやすみ人面瘡
重ね重ね言っておくけれども、鬼畜表現が苦手な人にはおすすめしない。
突如蔓延した奇病。感染爆発。感染者の迫害、人権侵害。
風俗店で使い捨てのように働かされ、ヤバめの裏メニューまである。
非人道的なのは間違いなく、見ていて決して気持ちの良いものではない。
物語は2つの軸を進んでいく。
1つは風俗店の従業員・カブの視点。
2つ目は、十七年前に感染爆発を起こした町に住む女子中学生・サラの視点。
物語が進むに連れ2つの軸が徐々に交錯し、それぞれに起こった事件の真相が明らかになる。
“事件の真相”に関しては、特殊設定故の特殊な真相だなと思いつつ…。
個人的には結末が好きな部類でした。
“エピローグ”めちゃくちゃ大事。
これ、五十嵐貴久さんの【リカ】を読んだときにも思ったなぁ。
あと、【おやすみ人面瘡】のタイトルが凄く良いと思った。
作品の最後の1行まで読み終わったときに、反射的に脳内でタイトルが反芻された。
これは初めての体験。
終わりよければ全てよし!
誰も救われない物語を読みたい人にとってもおすすめです。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れさまでした!