アガサクリスティーのミステリー小説『そして誰もいなくなった』を2度読みしました。
ミステリー小説を2回読むなんて…と思われるかも知れませんがお付き合いください。
私もついに『そして誰もいなくなった』を読んだ
「世界一有名」と言っても過言ではないであろうミステリー小説の代表作、アガサクリスティーの『そして誰もいなくなった』を読み終えました。
噂に違わぬ良質な作品。典型的なクローズド・サークル。
孤島に呼び寄せられた10人が1人ずつ殺されていき、生き残っている人たちが疑心暗鬼に陥っていく様が描かれています。
今回は
これら2つの条件が重なり、いい機会だと思い手に取ることにしました。
Voicy対談より、作家・真山仁さんの「クリスティーは2度読め」
▲無料で聴ける音声配信なので興味のある人はどうぞ▲
Voicyで私がフォローしているチャンネル「荒木博行のbook cafe」で、作家の真山仁さんがゲスト出演した放送です。
「正しさの疑い方」というトークテーマですが、
上記の放送では「能動的に小説を読むことの効用」と「ミステリーを読むことの有用性」について語られています。
その中で具体例として挙げられているのが、アガサ・クリスティー作品なのです。
クリスティー作品の特徴として、
- 登場人物の大半が嘘つきであること(様々な理由で犯人以外も嘘をつく)
- 大半が傑作でハズレが少なく、誰でも読みやすいこと
この2つが述べられています。
私も『そして誰もいなくなった』を(2回)読んでみて、全くその通りだと感じました。
そして今回のトークテーマ(正しさの疑い方)を踏まえて、重要なのは2回読むことだと語られているのです。
ミステリーとして楽しめるのは1回目ですが、1回読んだだけでは作品内で語られた嘘を全て思い出すことはできません。
改めて読み直すことによって、違和感に気づくことができるとのこと。
そんなわけで、私自身も「クリスティーの2度読み」を実践してみたのです。
『そして誰もいなくなった』1周目
傑作ミステリー小説を初めて読む面白さ。
この物語がなぜ傑作と呼ばれるのかは読めばわかります。
誰も彼も怪しすぎる登場人物たち。
巧妙に隠された真実。
長すぎず短すぎず、誰にでも読みやすい過不足のない物語。
真山さんの発言に触発されて、犯人は誰なのか、常に考えながら読み進めました。
もちろん最後まで犯人はわかりませんでしたけど!
わからな過ぎて、途中でChatGPTに「ミステリー小説の謎解き方法」を聞いてしまったくらいです。
聞いたところで全然わからなかったけれども…!!
尚、以下がChatGPTからのアドバイスなので興味ない人は読み飛ばしてください。
ミステリー小説の謎を解くには、以下の手順が役立つかもしれません。
1.登場人物を注意深く観察する
物語の登場人物は、謎を解く上で重要な手がかりを提供しています。登場人物たちは、謎を解くために必要な情報を持っているかもしれません。また、誰かが謎を解く手がかりを知っている場合、その人物の行動や言動からそれを推測することができるかもしれません。
2.犯罪の詳細を把握する
物語の中で起こった犯罪に関する情報を注意深く分析し、その詳細を把握することが重要です。犯罪がどのように起こったのか、誰が犯人である可能性があるか、犯罪がどのように隠されたのかを考慮することが必要です。
3.物語の伏線を辿る
謎を解く上での重要な手がかりは、物語の伏線を辿ることです。物語の中には、犯罪が起こる前に、あるいは犯罪が起こった後に、謎の答えを示唆するヒントが隠されていることがあります。
4.推論する
謎を解くには、物語の情報を利用して推論することが必要です。犯罪を起こした人物の動機、アリバイの証拠、物語の中で語られていない事実などを考慮して、犯人や謎の答えを推測することが必要です。
結論を出す 最後に、物語の情報を総合的に考慮し、謎の答えを導き出します。謎を解く上で重要なのは、物語の中で提供された情報を正確に解釈し、推論した結果を正確に評価することです。
「くっそ~、わかりそうでわからないこと言いやがって…!!」
と言うのが私の素直な感想でした。
ちなみに読了後、同AIシステムに『そして誰もいなくなった』の犯人を教えろと要求してみたけれど回答はメチャクチャでしたw
「お前もわかってないんだな…」という妙な安心感と生暖かい気持ちに満たされたのも事実です。
そんなこんなで、結局私は騙され続け、自力で犯人に辿り着くことなくクライマックスを迎えました。
何かを学んだようで学んでいない、これまで通りの趣味としての読書を満喫したのです。
『そして誰もいなくなった』2周目
「ミステリー小説を続けて2回読む」と言うのは人生初の体験でした。
そして真山さんが言っていた「登場人物の大半が嘘つきである」とはこういうことか…と、改めて実感したのです。
嘘をつくのは犯人だけではありません。
事件とは関係なくても、自分にとって都合の悪いことがあれば嘘をつく。
具体的に嘘を発言しなくても、言うべきことを言わずにだんまりを決め込む。
客観性に欠ける主張をしたり、印象操作を盛り込んだりする。
これらは小説特有のものではなく、実社会でも同じ現象が起こっています。
小説と社会を結びつけ、小説を読む動機を更に強める。真山さん、さすがです…
非常に不思議なことに、『そして誰もいなくなった』の2周目を読んでいると、
犯人の発言が、犯人の発言にしか見えなくなってくるのです(迷走)。
つまり、「どう読んでも犯人はお前しかあり得ない」みたいな感覚です。
1周目に全く犯人がわからなかったはずなのに、なんとも言えない調子の良さ。
この人が犯人だからこう言ったんだよね。
このこだわりがあるのは犯人だからこそだよね。
そもそもこの事件は、この人が犯人だからこその構成だよね。
知ったかぶりもいいところです。
初読で何一つわからなかったくせにw
認知バイアスがひどい…ww
私が2周目の序盤で感じた違和感をひとつ記します(トリックとは無関係)。
フィリップ・ロンバードとマッカーサー将軍の会話より。
“次は、おまえは戦争に行ったのか、そんな年なのかと、きくんだろう。こういう年寄は、いつもそうだ”と、ロンバードは思った。
ところがマッカーサー将軍は、戦争のことには触れなかった。
『そして誰もいなくなった』P38より
何気ないやり取りだけれど、会話がこうなったことにはきちんと理由がありました。
1周目では「マッカーサー将軍はロンバードに興味ないんだね」と読み流した私ですw
登場人物の「発言」や「独白」は信用ならないものが多いですが、
「視点」は事実の割合が大きいです。
この2つを上手く整理できれば、真相究明に役立つのかも?
ミステリーと私の関係が明らかになりつつある
自分のことを自分で理解するのは案外難しい。
私は自分が「読書が好き」なことは理解しているけれど、
「1番好きなジャンルが何か」は理解していません。
割と雑食というか、幅広く読む方だと思っています。
「作家買い」というのもあまりしない方だし。
今回改めて良質なミステリー小説を読んでわかったことは、
「ミステリーというジャンルは私にとって1番ではないな」ということです。
謎解きよりもストーリー性を重視するという好みが浮き彫りになりました。
先日読んだ本に書かれていたことを思い出したのです。
『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』という本。
好奇心には「What型」と「Why型」の2種類がある。
「なに?」と問う好奇心と、「なぜ?」と問う好奇心。
地頭力に必要なのは「なぜ?」を問う問題解決型の好奇心なのだけれど、
私の好奇心は明らかに「なに?」を問う「What型」なのです。
答えや知識を求めがちで思考力に欠ける…
自分で書いていて悲しくなるけれど、これが現実です。
そしてミステリー小説を存分に楽しめる人は「Why型」の「なぜ?」を問う力がある人だと思うのです。
問題解決型の思考力を持ち合わせている人。
物語の過程でトリックについて思考を巡らせることができる人。
私のように「What型」の好奇心が強い人間は、「犯人は誰なの!?」と最終結論に一足飛びしがちです。
そんなわけで、私のような地頭力の足りない人間は、ミステリー小説を満喫しきれないという結論に達しました(敗北感)。
例え1番じゃなくても、好きだからこれからも時々は読むけれど。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れ様でした!