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『三体X 観想之宙』良質な物語と二次創作の必要性は別問題だと感じたお話


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『三体 第三部 死神永生』の裏側で何が起こっていたのか。

天明(ユン ティエンミン)の人生(脳だけになってからの)がどんなものだったのか。

具体的な答えが欲しい人は是非読んでみてほしい。

原作者とは別人が描いたとは思えないほど、かなり攻めた内容になっている。

だからこそ「要注意」でもあるのだけれど。

二次創作と侮ることなかれ。

されど、二次創作であることを忘れるべからず。

『三体X 観想之宙』は秘めた答えに踏み込む作品

本作は序章から掴みはバッチリ。

いきなり著者の言葉から始まる。

なぜこの物語を描いたのか。

どういう経緯で本書の出版に至ったのか。

結論から言ってしまえば著者の宝樹(バオシュー)さんは、『三体シリーズ』の熱烈なファンだとのこと。

長い『三体シリーズ』を熱心に読み切り、更には「二次創作(本書)」にまで手を伸ばしてしまう私たち読者は、宝樹さんの語る「三体ロス」に共感するしかない。

『三体』の原作者が出版を認めるほどの二次創作小説『三体 X』、つまらないわけがなかった。

『三体 死神永生』の公式外伝(スピンオフ)

そもそも本作『三体X 観想之宙』は、単独で読むものではない。

三体シリーズの第三部 死神永生まで読み切った人向けに描かれているものであり、登場人物も死神永生のキャラクターがメインとなっている。

マーケットをかなり絞って出版された作品ではあるものの、本家『三体』の世界的売れ行きを鑑みれば購買率はめちゃくちゃ高いマーケットなのかもしれない。

『三体X 観想之宙』が果たす重要な役割。

それは答えを明確に示すことだ。

原作ではハッキリと描かれなかった細部が、本書では驚くほど詳細に描かれている。

正直なところ読者(私)が「え???他人(原作者以外)がここまで明確に答え示しちゃっていいの?」と心配になるくらい明確なのである。

心配になる反面、その部分はやはり読者的には具体的に知りたかったところでもあり…

そこが絶妙なチョイスなんだろうな、と。

さすが「熱烈なファン」が描いているだけある。

そんなわけで、中には本書を読みたくないファンもきっといることだろうと思う。

余計な設定を付け加えられたくないとか。

原作者があえて提示しなかったものを勝手に明確にされたくないとか。

それも尊重するべき意見だと思う。

実際、読んでみて微妙な気持ちになった読者もいるみたいだし…、その気持ちもわかるw

この二次創作はある意味、設定に踏み込みすぎているw

ただ、私は自分の想像力が貧相なので「どういう答えがあるのか」の一例を知りたかった。

だから本書はあくまで二次創作で、「本編とは別物」であることを強く意識して読み進めた。

「自分と同じ三体ファンが提示した、一つの可能性である」ことを認識して読むのは、存外重要だったのかも知れない(何しろ踏み込みすぎているのでw)

また、『三体シリーズ』は物語の特性上スピンオフを受け入れやすい設定に元々なっているのも幸いしたように思う。

何しろ壮大な宇宙の話だし?

始まりから終わりまでを考えたら色んな世界線あっても不思議じゃないじゃん?

物語が1つである必要性もあまりない気がするし、そこも魅力の一つかなぁ?と思ったりするわけです。

しかも『三体X 観想之宙』では、二次創作が受け入れやすいように(なのかはわからないけど)ちゃんとそういう示唆が設定に盛り込まれている。

本当によくできた二次創作だと思う。

『三体X 観想之宙』の特徴

まず、文体が違う

別人が描いているので当たり前だがw

なんだろうな…悪い意味ではなくて…

とても情緒的な文体なんだよね。(原作比)

そこが読んでいる最中も「これは二次創作なんだ」と認識させてくれるポイントかもしれない。

原作はそれこそ、宇宙(上)から登場人物を観ている感じなのだけれど、

本書は登場人物と同じ目線に立っているような感じがする。

これが読み始めてすぐに感じた違和感だった。悪い意味ではなく。

 

そしてもう一つが、原作にはない設定の明示である。

  • 三体人の外見がどんなものか
  • 宇宙に飛ばされた雲天明の脳はどうなったのか
  • 艾AAと二人きりでプラネットブルーに取り残された生活がどんなだったのか
  • その後の雲天明がどうなったのか
  • “歌い手”とは何者だったのか
  • そもそも宇宙の低次元化はなぜ始まったのか

などなどなど。

とにかく物語の繊細な部分(?)にズカズカと踏み込むような内容になっている。

そんなわけで、踏み込まれたくない繊細な人にはオススメできないかも知れない。

 

おまけでもう一つ挙げるなら、物理学的な難しさはほとんどないので本編よりもサクッと読める。

これはちょっとありがたい半面、キャラクターの人物像を掘り下げすぎていて、私が抱いていたイメージと少し違ったりもした。

多少なりとも「やりすぎ感」は否めない。

「こういう世界線もあるかも知れない」という気持ちで読むべき作品

一言で表すならこれである。

堅苦しく考えてはいけない。

本作はあくまでも二次創作で、私たちと同じ「三体ファン」が思い描いた一つの空想である。

読みながら色々なことを思ったけれど総合すれば面白く読めたし、読んでよかったと思っている。

何よりこの物語を書き上げた熱量が凄いし、圧倒される。

壮大な物語の二次創作は、やはり壮大なのである。

そして1番共感できるのはやはり「三体シリーズ面白すぎて読み終わったあと三体ロスになったよねー」ってところである。

「わかるー!」ってなるじゃん。

それを共感できる相手がいるだけで素晴らしいことなんだ。

どーでもいいけど『死神永生』のあらすじは頭に収録しておいて欲しかった。

巻末にあるの気付かずいきなり『観想之宙』に突入しちゃったー。

先にあらすじで復習しておきたかった…

目次を読み流しちゃうの悪い癖だな。

 

次は『三体0 球状閃電』を読む(使命感)。

丁儀(ディン イー)も結構好きなキャラだったんだよね。

こちらは原作者が描いたもの。

 

そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。

お疲れ様でした!

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