夏といえばホラーかなって、安直にそんなことを考えた。
本当は冬でも読むのに。
次に読む本を決めるのなんて、それくらい適当な選択なのだ。
怪談が盛り沢山な【どこの家にも怖いものはいる】
“家に纏わる怪談”というのは、一人暮らしには結構くるものがある。
だからこそ、私はとても好き。
三間坂という編集者と出会い、同じ怪談好きとして意気投合する作家の三津田。その縁で彼の実家の蔵から発見された「家」に関するいくつかの記述を読むことになる。だが、その五つの幽霊屋敷話は、人物、時代、内容などバラバラなはずなのに、奇妙な共通点が……。しかも、この話を読んだ者の「家」には、それが訪れるかもしれないらしい。
登場人物は著者の三津田信三さん本人で、こういうフィクションなのかノンフィクションなのか曖昧なスタイル嫌いじゃない。
私の一押しのホラー、【残穢】(著者:小野不由美)も同じスタイルだった。
【どこの家にも怖いものはいる】のあらすじ
『まったく別の二つの怪談なのに、どこか妙に似ている気がして仕方がない……』
三間坂は、友人である三津田にそんな話を持ち寄った。
登場人物も、時代背景も、内容も、全てが全く異なるはずの二つの怪談。
それなのに、何かが引っかかる…。
話を聞こう、と腰を据えた三津田に、三間坂は「現物」を送ると告げた。
一つは、市販の大学ノートに書かれた主婦の日記。
もう一つは、少年から体験談を聞き出した速記原稿を清書した紙。
なぜだかわからないけれど似てるような気がする二つの怪談を調べているうちに、二人の元に更に別の怪談が集まってくる。
最終的に集まった怪談は全部で五つ。
共通する「何か」は本当に見つかるのか!?
そんなわけで、本書では五つの怪談を読むことができる。
一話目。向こうから来る 母親の日記
二話目。異次元屋敷 少年の語り
三話目。幽霊物件 学生の体験
四話目。光子の家を訪れて 三女の原稿
五話目。或る狂女のこと 老人の記録
個人的に特に面白かったのは、一話目と三話目の怪談。
特に三話目のは、一人暮らしの学生の体験談なので、なんとなく、自分が住んでいる物件と重ねてしまう…。
帰宅時に、私も思わず自宅の屋根の上を見上げてしまった。
何も見えなかったけどw
私が結末を読んで鳥肌が立った理由
三津田と三間坂は、この五つの怪談のミッシングリンク(失われた環)を探っていく。
「ミッシングリンクというのは、その正体が何か分かった瞬間、今までバラバラに映っていた出来事が、一気に繋がって見える―そういうものなんだ。だから連続殺人事件の場合は、それが被害者たちに隠されていた意外な繋がりを意味する」
「では、この三つの話だと…」
「まったく別々の異なる話なのに、なぜ似たような怪異が起きたのか、その理由が判明することになるな」
「す、凄いじゃないですか」
単純に喜ぶ彼を見て、いささか僕は慌てた。
「待て待て。必ずミッシングリンクがあると決まったわけじゃない。やっぱりバラバラの関係のない話だったと、そう結論づけざるを得ないかもしれないんだから」
三間坂を期待させて三津田は慌てたわけだけれども、もちろんこれが一冊の小説にまとまっているくらいなので、ミッシングリンクは存在する。
私にとって問題だったのは、三津田がついに、五つの怪談のミッシングリンクに辿り着いたときだった。
最初、三間坂は「それは有り得ないでしょう」と三津田の説を退けた。
けれども私は、そのシーンで鳥肌が立ってしまったのである。
三津田が語ったミッシングリンクは、私の予想と同じだったから。
しかも私は、そのミッシングリンクに
「1つ目の話 向こうから来る 母親の日記」で気付いてしまっていた。ちーん。
これは…致命的だ。
あらすじさえ知らず、前情報ゼロでこの小説を読んだはずなのに、序盤で結末に辿り着いていたとは………。
そんな自分の勘の鋭さに鳥肌が立ってしまったのであった。
そんなわけで、個人的には、『実はミッシングリンクなんて無くて、バラバラのただの怪談でした!』という結末の方が意表を突かれた気がするw
理屈とか、推理とかは苦手なんだけど…
変に勘が働く人間は、ホラーと相性が悪いのかも知れない…
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れさまでした!