やはり、私にとって大沢在昌さんの小説は特別だなと思った。
幼い頃、私の部屋には本棚があり、そこには母の蔵書が並んでいた。
今思うと、その中の一部は大沢在昌さんの著書で、新宿鮫シリーズが並んでいたw
大人になると、私は知らないうちに大沢在昌さんにハマっていた。
彼の著書を漁るようになり、その時に初めて幼い頃に眺めていた本の背表紙が彼の本だったと知ることになる。
母の教育恐るべし。
未来予測システムを巡る物語【ニッポン泥棒】
失業し、妻にも去られた64歳の尾津に、青年は突然告げた。あなたは未来予測ソフトウェア「ヒミコ」の解錠鍵“アダム4号”なのだ、と。ヒミコを狙う強大な勢力の手から、尾津は逃れられるのか?
もう一人の解錠鍵“イブ2号”の正体とは? リアルワールドとインターネットを股にかけた、かつてないサスペンスが幕を開ける!
この表紙がね。
なんか大沢在昌さんの著書っぽくて好きよw
未来を予測するシミュレーションソフト“ヒミコ”
未来を予測することなんて可能なのだろうか。
本書は2005年頃の作品で、作中の舞台も同じ頃が設定されている。
2022年の現代において、私達一般人が一番耳に馴染んでいるのがスーパーコンピューター『富岳』かな、と。
同じものではないけれど、富岳の超上位互換と思っていいのかな。
ただし“ヒミコ”は、公に運用することはできない。
“ヒミコ”を開発したのは、インターネット内で『クリエイター』と名乗るグループ。
日本人のハッカー5人組だ。
その正体は不明。
“ヒミコ”を構築する材料は、過去の歴史と世界情勢、そしてあらゆる場所から盗み出した個人情報。
各国の要人から企業家・一般人に至るまで、その情報量は膨大だ。
始めは軽い気持ちで作られたシミュレーションゲームソフト。
ところがヒミコに詰め込む情報が膨大な量になるに連れ、それは高確率で未来を予測するソフトとなり、ヒミコに組み込まれた“ある一つの機能”がとんでもない役割を果たすことになる。
そんな中、ヒミコ製作時に情報を盗み取った国外のとある情報機関がヒミコに目をつける。
組織は強硬な手段に出たため製作者は危険を感じ、ヒミコに鍵をかけどこかに封印してしまう。
ヒミコを解錠する鍵とは一体なんなのか。
コンピューターソフトで本当に未来を予測することなんてできるのか。
そしてそれは、本当に人命を賭ける価値があるのか。
あらゆる疑問が浮かび、誰のことも信用できず、
一方的に鍵を託された尾津は、ヒミコを手に入れたい勢力からも消したい勢力からも逃げ惑うことになる。
尾津自身、何が鍵なのかもわからないまま。
『イブ2号との組み合わせ』とは、一体何を示すのか!?
【ニッポン泥棒】を読み終えた感想・レビュー
中々読み応えのある上下巻でした。
一冊でもまぁまぁな厚さだけど、それが二冊。
しかしあっという間に走り読み。
主人公の尾津さんは現役引退済み熟年離婚済みの寂しいオッサンです。渋いw
しかし彼は元商社マンという経歴を持ち、アジアの国々を飛び回って色々と危険なお仕事をしていた過去がありますので、中々のタフオジw
シミュレーションソフト“ヒミコ”についても、
自分がヒミコ解錠の鍵に勝手にされたことについても、
また鍵とは言えどうやってヒミコを解錠するのかについても、
どこの組織がヒミコを狙っているのかについても、
ハッキリとしたことは何もわからないまま、とにかく意味不明に狙われる尾津さん。
わからないことが多い分、少しずつ真相に近づいていくのが面白くて目が離せなくなりました。
相手の思惑も一枚岩ではないので敵味方は入り混じり、複雑な情報戦が繰り広げられます。
大沢在昌さんといえばハードボイルド。
本書はサスペンス&ハードボイルド。
物語の中心は未来予測ソフトウェアなので、SFっぽい雰囲気も少々。
お好きな方は是非に。