皆様、三本足の烏をご存知ですか?
彼らは人に化けるらしい。
日本神話にも登場する三本足の伝説の烏、八咫烏(やたがらす)。
本作「八咫烏シリーズ」は、人間の姿に変身することが出来る彼らの一族が、異世界・山内(やまうち)を縦横無尽に飛びまわる長編和風大河ファンタジーです。
面白いと聞いてはいたけどやっぱり面白い。
読み始めると止まらなくなりすっかり寝不足に。
今回は小説の紹介ですが、私はアニメから入りました。
アニメが面白かったから原作小説を読みたくなったのだけど、当たり前に小説は面白さが100倍で、最初から原作読めばよかったと少し後悔しました。
▼アニメ▼
オーディブル版もあるので、契約している方には原作の耳読も非常におすすめです。
- 1.第一部1巻『烏に単は似合わない』
- 2.第一部2巻『烏は主を選ばない』
- 3.第一部3巻『黄金の烏』
- 4.第一部4巻『空棺の烏』
- 5.第一部5巻『玉依姫』
- 6.第一部6巻『弥栄の烏』
- 7.外伝1巻『烏百花 蛍の章』
- 8.第二部1巻『楽園の烏』
- 9.外伝2巻『烏百花 白百合の章』
- 10.第二部2巻『追憶の烏』
- 11.第二部3巻『烏の緑羽』
- 12.第二部4巻『望月の烏』
- 13.第二部5巻『亡霊の烏』
- まとめ
▲順番のみ知りたい方は目次参照▲
1.第一部1巻『烏に単は似合わない』
人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎである若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。
朝廷での権力争いに激しくしのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。
春夏秋冬を司るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一向に現れないまま、次々と事件が起こる。
侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……
美しく華やかな宮廷生活の水面下で若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは果たして四人の姫君のうち誰なのか?
ありがちな「後宮物語」のように見えるけれど、これはほんの一部。
このシリーズは構成が斬新なのも魅力の一つ。
「後宮もの」が好きな人も苦手な人も、きっと楽しめるはず。
作者の阿部智里さん、本作にて最年少で松本清張賞を受賞したとあって、シリーズを一気読みすると書き手としての成長っぷりも、否が応でも見せつけられる。
読めば読むほど物語に惹き込まれていくので、長編和風ファンタジーに浸りたい方にとってもおすすめです。
2.第一部2巻『烏は主を選ばない』
八咫烏が支配する世界・山内では次の統治者金烏となる日嗣の御子の座をめぐり、東西南北の四家の大貴族と后候補の姫たちをも巻き込んだ権力争いが繰り広げられていた。
賢い兄宮を差し置いて世継ぎの座に就いたうつけの若宮に、強引に朝廷に引っ張り込まれたぼんくら少年雪哉は陰謀、暗殺者のうごめく朝廷を果たして生き延びられるのか……?
時系列は1巻と同じだが、全く別種の物語。
ミステリー風後宮物語の裏で巻き起こる政治闘争。
同じ時、同じ場所(山内)で起こった出来事なのに、こうもガラリと雰囲気が変わるとは……
そしてシリーズ全体で見ると主人公といっても過言ではない雪哉がまともに登場するのもやっとこの巻からで、構成が独特すぎるでしょ……(褒めてる)
あぁ、可愛い雪哉。ずっとそのままでいて……
3.第一部3巻『黄金の烏』
物語は世継ぎの若宮と、郷長のぼんくら(とされる)次男坊が、危険な薬〈仙人蓋〉の探索にでかけるところからはじまる。
不穏な気配を漂わせた旅先で、何と彼らが出会ったのは、人を喰らう大猿だった!
壊滅した村の中でたったひとり残されたのは、謎の少女・小梅。――いったい僕らの故郷で、なにが起こっているのだろう?
山内の危機に際し、若き主従は自らの危険を顧みず、事件のヒントを持つと思われる暗黒街の支配者のもとに出向く。
そこで雪哉に課されたのは、未知の隧道の先にある物を持ち運ぶことだった。深い暗闇の底での冒険の末、雪哉が見たものとは?
今度は外敵(大猿)襲来という、またしても全く別の切り口で物語は紡がれる。
山内で「馬」といえば八咫烏のことであり、「人」といっても同じく八咫烏のことである。
八咫烏たちは他の生き物の存在を知らず、山内とは閉ざされた閉鎖空間のようなものだった。
そこに大猿襲来。
しかも八咫烏を食い散らかす大猿たちが、どれほどの混乱を招くことか……
それでも彼らの姿が人を模したものならば、彼らが作る社会もまた人間社会に似ているはずで。
弱者の前には圧倒的な理不尽が立ち塞がる。
“仲間”という詭弁。
時に人が人を殺すのと同じように、八咫烏も八咫烏を殺すのだ。
4.第一部4巻『空棺の烏』
八咫烏の一族が支配する世界山内で、宗家を守るのは山内衆と呼ばれる上級武官。
勁草院という養成所で厳しい訓練がほどこされ、優秀な成績を収めた者のみが護衛の栄誉に与る。
平民の茂丸、下人の千早、大貴族の明留、そして武家の雪哉。
生まれも育ちも異なる少年たちは、勁草院の過酷な争いを勝ち抜き、日嗣の御子を護る武人になれるのか――。
今度はまさかの学園もの……!?
切り口の幅が広すぎて恐れ慄く。
読者がシリーズに沼るように仕組まれている気がする。
読んでみて思うのは、この勁草院入りが、雪哉の人生における重大な分岐だったのでは?ということ。
ここでの出会い、ここでの出来事。
それらが尊いほどに、人生を狂わせるほど大きな影響を及ぼすことになる。
あ……なんかちょっと辛くなってきた……
5.第一部5巻『玉依姫』
高校生の志帆は、かつて祖母が母を連れて飛び出したという山内村を訪れる。
そこで志帆を待ち受けていたのは、恐ろしい儀式だった。
人が立ち入ることを禁じられた山の領域で絶体絶命の少女の前に現れた青年は、味方か敵か、人か烏か?
ついに八咫烏の支配する異世界「山内」の謎が明らかになる。
一瞬間違った本を手に取ってしまったのかと思った。
あれ??人間????
いや、人間がいることは本来普通なんだけれども。
私だって人間なのだけれども。
外から見た山内。烏以外が語る物語。
これは人間社会でも思うことだけど、先祖の罪って、何代先まで償わなきゃいけないんだろう。
個人主義が浸透してきた現代でも、自分は都合よく個人として生きているつもりになっているのに、相手のことは集団で見てしまったりする。
相手を指す時だけ、主語、大きくなりすぎる問題。
だけど取り返しのつかないことというのは確かにあって、失ってしまったものはもう元には戻らず、償えないから赦されることもない。
この世の地獄味がある……
6.第一部6巻『弥栄の烏』
八咫烏の一族が支配する異世界・山内を舞台に繰り広げられる、お后選び・権力争い・外敵の進入。
大地震に襲われた山内で、100年前に閉ざされていた禁門がついに開かれた。
崩壊の予感が満ちる中、一族を統べる日嗣の御子・若宮は、失った記憶を取り戻すことができるのか。
そして、人喰い猿との最終決戦に臨む参謀・雪哉のとった作戦とは――。
再び2冊で表裏一体の物語。
この手法で読者をここまで惹き込むの、凄すぎませんか?
ここまでシリーズを読んできた読者なら、『玉依姫』を読みながら絶対に察するんですよ。
あ、これは、続刊を絶対に読まなければいけないやつだって。
普通は同じ時間を二度読まされたら多少なりともうんざりしそうなものだけど、このシリーズでは絶対にそれがない。
むしろ読みたい。読ませてください。
だって人間サイドから見たら八咫烏なんてただの烏で、言葉も通じないし名前さえない。
そんなのって辛すぎる。
私たちはここまで八咫烏に感情移入しながら読んできたのに……!!
それにしてもこのシリーズ、タイトルの付け方もめちゃくちゃいいよね。
読む前はどゆこと?って思うのに、読み終わるとその意味が染み込んでくる。
第一部はここで終了ですが、全然止まれる気がしないのです。
続きを読みましょう。
7.外伝1巻『烏百花 蛍の章』
異世界「山内」の壮大な歴史の流れの中、主要人気キャラクターたちはどんな風に育ち、一方でどんな関係を結び、事件の裏側でなにを思っていたのか。
美貌の姫君へのかなわぬ想い、愛を守るための切ない大嘘、亡き人が持っていた壮絶な覚悟、そして、「命をかけた恋」……
本編では描かれなかった、「恋」の尊い煌めきが満ちる魅惑の短編集。
第二部『楽園の烏』の前に必読の書。
このタイミングで絶対に読んでおくべき短編集。
ここまで読んできた読者なら、絶対に知りたい物語が綴られている。
どれが響くかは好みに左右されそうだけど、私は雪哉の母の物語が一番良かった。
産みの母のこと、育ての母のこと、それぞれ気になっていたので。
納得した。
梓の人生に、納得しました。
8.第二部1巻『楽園の烏』
新宿の片隅でたばこ屋を営む青年・安原はじめ。
7年前に失踪した父から「山」を相続した途端、「山を売ってほしい」という依頼が次々と舞い込み始める。
そこへ現れたのは、“幽霊”を名乗る美しい女。
山の秘密を知るという美女に導かれ、はじめはその山の“中”へと案内される。
その場所こそは、山内と呼ばれる異界。
人の形に変じることのできる八咫烏の一族が統治する世界だった――
猿との大戦(『弥栄の烏』)より20年の時を経て、物語は現代の風景から始まる。
舞台は次第に「山内」へと移り、動乱の時代を生き抜いた八咫烏たちの今、そして新たなる世代の台頭が描かれる。
また人間。しかも現代。
第二部ってそういうことかぁ、と思いながら読み進めたけどこれはまた……
山内がなんとも言えない展開になっている。
「空白の20年」が、これから少しずつ埋まっていくのだろうな。
話のスケールが大きくなってきた。
それに伴い、雪哉の人生が押し潰されているような気がしてならない。
安原氏に期待。好き。
9.外伝2巻『烏百花 白百合の章』
とんでもない意気地なし、と噂の少年・雪哉に剣の指導を頼まれた腕に覚えのある市柳は、おびえる雪哉に自信満々で打ち込むが、まもなく違和感を覚え始める――(「ふゆのことら」)
貴族の少年たちが、父の跡を継いだ職人が、全身全霊で守りたいものとは何か。
山内に生きる人々の幸せを誓った彼、そして、権力闘争のはざまに育つ姫君の心の奥にある思いとは。
こんなの泣いちゃうよ……
茂丸の話が収録されていた。
誰のことを想っても辛すぎる……
外伝とはいえこちらもシリーズ読者全員必読の書です。
10.第二部2巻『追憶の烏』
猿との大戦後、正式に即位した金烏・奈月彦。山内の存続のため、大貴族四家に協力を請いつつ、娘の紫苑の宮を自らの跡継ぎとするべく動き始める。
下界への留学を控えた雪哉は、美しい夜桜の下で紫苑の宮としばしの別れを惜しむのだった。
滅びゆく山内の、新しい時代が始まろうとしていた――外界で忙しい日々を送る雪哉にある日、信じがたい一報が。
『楽園の烏』に至る20年間になにがあったのか?戦慄の真実がいま明かされる。
まぁ、なんとなく前巻からそんな気はしてたけどね。
やっぱりそういう展開になっちゃうかぁ……
金烏とは特別で不思議な存在だけど、その存在が神に仕組まれているのなら、きっと終わりまで仕組まれているのではないかと思ったり。
「紫苑の宮」という存在も気になり始める。
本当に重要なのはどちらなのだろう。
11.第二部3巻『烏の緑羽』
正式に即位した弟の奈月彦を支える長束は、自らの護衛であり、長年側近をつとめる路近の心がわからない。
なぜ彼は自分に忠誠を誓ったのか?
その忠誠は信じられるものなのか?
答えを求め、ひとりの男のもとを訪れるが――
山内を襲ったあの大きな政変の裏で、長束とその配下の男たちが見ていたものとは。
貴公子を支える男たちの思惑、深い因縁と山内の行く末がからみあう!
中弛みとか、ないのかな?このシリーズは。
またしても新しい切り口。路近……
元々結構好きだったけど、もっと好きになった。
我が強くて、それを貫く物理的な強さもあるって、ちょっと憧れるよね。
そして再登場する清賢と翠寛。
『空棺の烏』の勁草院での出来事を補完しつつ、結構重要な人物たちだったのだと気付かされた。
それにしてもさ、「赤ちゃん」て言葉、ピッタリすぎませんか??
12.第二部4巻『望月の烏』
絶対権力者・博陸侯の後ろ盾のもとで、新たに異世界〈山内〉を統べる金烏代となった凪彦。
その后選びのため、南北東西の大貴族の家から選ばれた、四人の姫君たちが、宮中での〈登殿の儀〉へと臨む。
しかし下級官吏として働く、絶世の美姫の存在が周囲を――。
巡り巡って再び登殿の儀。
立ち位置が変わっても再度あせびの君が桜花宮にいる恐怖。
春殿の御方として真の金鳥・奈月彦に嫁ぐよりも良い席にちゃっかり座ってしまっているのがあせびらしすぎて何も言えねぇ……
頭が良すぎる人って生きづらいなと思う。
雪哉みたいな人は現実にもいる。
頭が良すぎると凡人との会話は噛み合わないし成り立たない。
最初は戸惑って、「自分がおかしいのかも?」と思ったりする。
そして自分の頭の良さを悟ると努力し始める。
自分が合わせるべき、合わせるしかないのだと思うようになる。
でも最終的には徒労に終わる。
そんなのは疲れるだけだし無意味でキリがない。
だから諦める。
結局は自己完結するしかなくなってしまう。
虚しくて、孤独な人生。
一説にはIQが20違うと会話が成り立たないとまで言われている。
凡庸であることは、平穏であるということなのだ。
雪斎は、気づいていた。だから生かした。
そもそも何のために、誰のためにこんなことをしているのか。
そこが肝要なのだ。
13.第二部5巻『亡霊の烏』
博陸侯の治世を揺るがす「亡霊」の影
博陸侯雪斎が独裁を敷く〈山内〉で、〈登殿の儀〉を経て皇后を選んだ金烏代・凪彦。
しかし二人の間に子が生まれる気配はない。
一方、谷間出身者たちの叛乱を生き延びた少年・トビは北家の朝宅で博陸侯の母と出会い――。
博陸侯の治世を揺るがす「亡霊」の影。
終幕に向けて、時間が進み始める。
「山内を守りたいのか、山内の民を守りたいのか」
長束の願いは、雪哉に届いているのだろうか。
本末転倒、という言葉がある。
一体何のために、誰のためにこんなことを。
前巻に引き続き、考えてしまう。
本当にこれで良かったのか、と。
少年の頃の雪哉を知っているからこそ、読んでいて辛くなる。
彼がなんのために、自分をどれだけ犠牲にしてきたのか知っているから。
絶望的な気持ちで読み進めるしかないのか。
破滅への道は思いのほか緩やかで、それはつまり、その分だけ長く痛みを伴わなければならないということなのかも知れない。
まとめ
ひとまず既刊の13冊を一気に読み抜けてみた。
面白い。非常に面白い。
これもあれだ。
「面白い長編ファンタジーシリーズからしか摂取できない何か」を摂取できるシリーズだ。
そして途中から(具体的には『玉依姫』と『弥栄の烏』ら辺から)「『進撃の巨人』味を帯びてきたなぁ」と感じている。
こうやって破滅に向かって突き進んでいく物語が好きなのかも知れない。
変な趣味かも。
内容的にそろそろ終りが近づいている感があり、それもまた感情を急き立てる要因となっているんだろうな。
今はただ、「早く続きを読みたい」という感覚に支配されている。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れ様でした!














