東野圭吾さんの“ガリレオ”と言えば、真っ先に思い浮かぶのはドラマで主演をつとめた福山雅治さん、そして柴咲コウさんです。
ドラマを観ていない私ですらそのイメージを払拭できないほど、映像化で有名な本作。
もはや湯川先生は福山雅治さんのイメージで読みましたw
東野圭吾さん的には佐野史郎さんをイメージして描いたらしいですけどねww(巻末の解説より)
探偵漫画を読んでいる気分になる探偵小説
突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮かんだデスマスク、幽体離脱した少年……警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた謎に天才科学者が挑む。
短編連作の本書は、警視庁捜査一課の草薙が、わかりやすく毎度毎度奇怪な事件に遭遇するところから始まります。
明らかに怪しい犯人候補がいるのにアリバイがある、又はどうやって殺したのか説明がつかない、死体が見つかったけどそもそも病死なのか殺人なのか判断がつかない、状況的には死んでるはずなのに行方不明のまま肝心のご遺体が見つからない、など。
とにかく通常の捜査でお手上げ状態になると、草薙俊平は友人の元を訪ねます。
学生時代の友人で、今は大学で物理学の助教授をしている湯川学。
湯川は草薙の話を聞き、時に冷たくあしらい、時には現場へ足を運んだりもし、豊富な知識をフル活用して華麗に事件の謎を解いていく。
基本的な話の流れが決まっており、各話で各事件がスッキリと解決するので読後感も良く、気軽に読める1冊です。
初心者でも気軽に楽しめる倒叙ミステリー
本作の1番の特徴は、倒叙ミステリーであることかと思います。
一般的なミステリーは事件の犯人を探すものですが、倒叙ミステリーではあらかじめ、犯人が誰なのか読者に知らせておきます。そしてその人が、どんなトリックを使って事件を起こしたのかを紐解く過程を楽しむのです。
これが長編だと伏線も多く混乱しがちなのですが、本作は何しろ短編。1話で1事件なのでわかりやすく、ミステリー慣れしてない人でも気軽に楽しめる作品となっております。
漫画のように“テッパン”があるからわかりやすい
話の流れが決まっている点もそうですが、もう一つは湯川学のキャラクター性かなと個人的には思います。
物理学の専門家で、
大学の助教授で、
スポーツもできて、
警察官の友人からも頼りにされ、
顔が福山雅治(脳内イメージ)。
え?こんなハイスペックな男性いる??(ちょっぴり偏屈なところも魅力の一つ)
設定が少女漫画チックでそれがなんだか面白く、色んな意味で話をわかりやすくしている気がするのよね(しつこいようですが福山雅治は作者が決めた設定ではないw)
各章のタイトルが好み
もう一つ、私の好きなポイントは各話のタイトルです。
- 燃える(もえる)
- 転写る(うつる)
- 壊死る(くさる)
- 爆ぜる(はぜる)
- 離脱る(ぬける)
当然ですがこのタイトルは、それぞれの事件の特徴を表しています。
理屈で説明するのは難しいですが、言葉の選び方や漢字の充て方がなんとも言えず好き。
スッキリしていて韻も良く、オリジナリティも程よく混ぜてある感じが良い。
どうせプロの文章を読むなら美しい文章を読みたいと日頃から思っているので、個人的には結構重要なポイント(文章というかタイトルだけどw)。
私が【東野圭吾の小説】を【作家買い】しない理由
私自身は東野圭吾さんの本を手に取ることはあまりないので、今回は珍しい縁だったなと思います。
これは個人的な好みの問題で、私はストーリーも文字数も、全てにおいて重量感のある重苦しい小説が好きなので…
東野圭吾さんは逆のタイプの作品が多いんですよね。
長編読んでもサッパリ感があるというか…。
その分読みやすいし、読書に不慣れな初心者の方でも挫折することなく読了出来ると思います。
あと、描くのが速いので有名な作家さんなので、ファンの方が羨ましいと言うのもあります。新作がいっぱい読めるもんね(笑)
テンポ良く、後腐れなく、短時間であっという間に読めるので、そういう小説が好きな人にはとってもおすすめの一冊です。
余談ですが、作家買いしないのにたまに読んでしまうのは、【いつもテーマが面白そうだから】なんですよね。
未読で気になっている東野圭吾さんの小説は、“ラプラスの魔女”です。
“ラプラスの悪魔”をテーマにしてるみたいなんだけど、よく考えたらこれも物理学だな…。