現実にこんな事が起きているなんて…
イマイチ信じられないのは、私が日本生まれの日本育ちで、
平和ボケした生粋の日本人だからなのだろう。
けれど中国は違う。
あの国は、日本には到底できないようなことも堂々とやってのける。
新疆ウイグル自治区は、悪質なテクノロジーの実験場と化している。
新疆ウイグル自治区で何が起きているのか
この本を読み始めてすぐに、私はPSYCHO-PASS(アニメ)のドミネーターを思い出した。
ドミネーターとは作中に登場する特殊な銃で、携帯型心理診断鎮圧執行システムを備えている。
取り扱えるのは公安の刑事で、
その銃を向けるとシュビラシステムが瞬時に相手の犯罪係数を測定し、
その数値によって銃の威力が決まる。
測定された犯罪係数が0~99なら銃はロックされて打つことができない。
100~299はパラライザーが起動し、相手を気絶させる。
そして測定された犯罪係数が300を超えると、エリミネーターが起動し対象を排除する。
これは実際に犯した犯罪とは関係がなく、潜在犯(これから犯罪を起こしそうな人)も含まれる。
こんなのはアニメの世界だ。フィクションだ。
そう思っていた。
けれど中国は、実際にこれと似たようなことをしている。
中国について、あまりにも知らないことが多い
日本からも遠くない中国。
日本国内に溢れるメイド・イン・チャイナの商品。
身近な国だと錯覚しそうになるけれど、
私は中国のことを何も知らないのだと改めて思い知った。
私が中国について知っていることなんて、
書き出してみるとこんな程度…
小学生並みの知識レベルで涙が出そうになる…
AI監獄とはどんなものか
監視システムの名前は「スカイネット」。
スカイネットによって新疆ウイグル自治区は、街全体がパノプティコンと化している。
パノプティコンとは一望監視装置のことで、囚人を監視する刑務所の形態のことだ。
建物の中心に監視塔があり、そのまわりを囚人たちの独房が囲っている。
囚人同士は接触することができず、看守からは囚人たちが丸見えで、
けれど囚人は看守の様子を窺うことはできない。
新疆ウイグル自治区の街中には数え切れないほどのカメラが設置され、
時にその設置は家の中にまで及び、
家を出るのも店に入るのもIDをスキャンしなければならず、
購入品に至るまですべて監視され、
AIが「信用できる人物」と判定しなければ、
ガソリンを購入する権利を剥奪される。
たとえ収容所送りを免れたとしても、新疆での日々の生活は地獄だ。
あなたがウイグル人の女性なら、政府から派遣されてきた見知らぬ人物の隣で毎朝目覚めることになるかもしれない。
その男性は、収容所に連行されたあなたのパートナーの代わりを務める人物だ。
いや、何それ…意味不明すぎるでしょ…怖い…
出勤の前に車でガソリンスタンドに寄っても、
夕食の食材を買いに食料品店に行っても、
どの場所でもあなたは、
入口に立つ武装警備員のまえでIDカードをスキャンすることになる。
カードをかざすと、スキャナー横の画面に「信用できる」という文字が表示される。
それは政府によって善良な市民だと判断されたという意味であり、
そのまま入店することが許される。
「信用できない」と表示された場合、その人物は入店を拒否される。
すぐに統計データ記録の簡易チェックが行なわれ、場合によってはさらなる問題に直面することになる。
このシステムの最も恐ろしい点は、
人工知能(AI)が何を基準に「信用できない」と判断するのか、
理由がハッキリとわからないところだ。
中国当局は「心のウイルス」として、3つの悪を掲げている。
- テロリズム
- 分離主義
- 宗教過激主義
顔認証システムに、モスクで祈る姿が捉えられていたのかも知れない。
あるいはビールの6缶パックを買うところが撮影されて、アルコールについて問題のある人物と判定されたのかも。
自宅に大量の食料を保管しても怪しまれるし、
これまで嗜んでいた酒や煙草を突然やめても怪しまれる。
住民は互いに監視し、密告することを義務付けられる。
同僚が仕事に遅刻した。
隣人がいつもの時間に散歩をしていなかった。
密告を怠れば、今度は自分の格付けが「信用できない」に落とされてしまう。
ファーウェイという企業
中国企業であるファーウェイがスマートフォンを発売したとき、ネット上で話題になった。
中国のスマホを使って大丈夫なのか?
情報を抜かれたりしないのか??
本気なのか冗談なのかもよくわからないような会話が繰り広げられていた。
ファーウェイという企業名は中国語で「華為」と書く。
意味は中国のために。
私たちが生まれる前から当たり前のようにある三権分立。
当たり前すぎて意識したこともなかった三権分立。
常識が、前提が、価値観の根底がそもそも違う。
企業は国のために、最新技術であらゆる実験を繰り返すし、
国の許可のもと国民のスマートフォンやPCをハッキングし監視し続ける。
そして国は、自由に企業のデータベースを参照でき、
不都合な人間は強制収容所へ送ることができる。
本名とSNSのアカウント名は関連付けられ、
メッセージアプリで送ったメッセージは保管され、
誰と誰がつながっているかも一目瞭然。
家族も友人も全てが人質となる。
民間企業を通じて全国で購買履歴やウェブ閲覧履歴も監視され、
これらは国民の信用度を格付けするのに一役買っている。
監視システム「スカイネット」の進化に欠かせないのが、
マイクロソフトなど米国企業の協力だ。
世界情勢が複雑すぎてクラクラする…
国際交流は一筋縄ではいかないらしい。
メイドインチャイナはなぜ安いのか
そういえば、これも数年前の出来事だと思うけれど。
「メイドインチャイナは安くなくなる」という意見が流れた時期があった。
これは中国が経済的にも発展してきて、これまでのように人件費が安くはなくなるという意味であったと思うけれど…
そんな意見はいつの間にか立ち消え、メイドインチャイナは現在も安いまま。
日本国内でも圧倒的な存在感を維持し続けている。
これは傍から見れば矛盾した不思議な現象であるけれど、
本書にはその答えの一端が記されていた。
強制労働にも従事させられているのだ。
世界の縮図が、中国一国の図にそのまま成っている。
「安い物好き」として広く認知されている日本人としては意見を言いにくい場面ではあるものの、
なんだか考えさせられてしまう内容が盛り沢山であった。
多くの人にとってこの問題は、不知ではない。
知ってはいるけれど、向かい合いたくない不都合な問題であるのは間違いがなく、
なんだか心の痛い一冊であった。
最近ノンフィクションの面白さに魅了されている。
「読書する時間」をもっと確保したいなぁと思いつつ、社畜には難しいんだよね…
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
お疲れ様でした!