Daydream

全ては泡沫のごとく、ただ溶けて消えていくだけ。。。

バレエの悪魔的魅力が語り尽くされた小説【ジゼル】について語る(著者:秋吉理香子)


スポンサーリンク

男に騙され、結婚を前に若くして亡くなった少女たち。

彼女たちは精霊・ウィリとなり、森に迷い込んできた男を死ぬまで踊らせたという。

華麗なるバレエ・ミステリー【ジゼル】

f:id:moon_memory_m:20210515234302j:plain

もう無理。

表紙だけで美しいもん。

どタイプ。

私のようにバレエをやっている人は絶対に楽しめるし、バレエを知らない人はバレエの悪魔的魅力を知ることができる素敵な作品。

東京グランド・バレエ団の創立15周年記念公演の演目が「ジゼル」に決定し、如月花音は準主役のミルタに抜擢される。

このバレエ団では15年前、ジゼル役のプリマ・姫宮真由美が代役の紅林嶺衣奈を襲った末に死亡する事件が起き、「ジゼル」はタブーとなっていた。そんな矢先、目撃された真由美の亡霊。公演の準備を進める中、配役の変更で団員の間には不協和音が生じ、不可解な事件が相次いで…。

これはすべて真由美の“呪い”なのか?

『ジゼル』の封印を解いた時、悲劇的な死を遂げたプリマの想いが甦る。

バレエがなぜこんなにも美しく心惹かれるのか。

眼で観ても美しく、耳で聴いても美しく、舞台の生の空気は肌が刺激され鳥肌が立つ。

それは、バレエが狂気の上に成り立つものだからに他ならない。

美しく優雅に舞うダンサーたちの足元には、常に狂気の沼があり、その水位は増し続けている。

喪失感、後悔、挫折感、嫉妬心。

虚栄心、闘争心、焦燥感。

舞台で魅せる美しさとは対局にあるものが、常にダンサーを縛り蝕み続けている。

 

結婚前に亡くなった若い娘たちが精霊・ウィリとなり、迷い込んだ男たちを死ぬまで踊らせる。

それは舞台の上で演出する狂気であるはずだった。

嫉妬に狂い、半狂乱で自我を失ったのは舞台のヒロインか、それとも役に固執したダンサー自身か。

 ロマンティックバレエの代名詞でありながら、死装束で踊る唯一のバレエという不気味な一面を併せ持つ『ジゼル』。

嫉妬に囚われ、疑心に溺れた者が狂っていく様がとてもリアルに描かれています。

バレエとミステリーの融合

この本を手に取ったのは、『ジゼル』というバレエの演目がそのまま本のタイトルになっていたからです。

バレエが好きな人なら見過ごせないタイトル。

背表紙しか見えていない本棚から取り出し、美しい表紙と帯に心を奪われました。

『バレエ・ミステリー開幕!』って帯に書いてあったww

『バレエ・ミステリーってなんやねんww』と心のなかでツッコミを入れつつ、しっかりレジに持っていきました。

読んだ感想としましては、めちゃくちゃ面白かったです。

 

舞台の配役を巡る嫉妬問題、15年前に死んだプリマダンサーの呪い騒動、嫉妬と疑心暗鬼で精神が不安定になっていくダンサーは、まるで狂乱のシーンで狂い死んだジゼルのようで、不気味にすら見えてきます。

 

ミステリー要素はまぁオマケ程度かなという感じ。

それよりもバレエ小説としての要素があまりにも面白すぎた。

嫉妬、羨望、妬み嫉み。バレエ団内での負の感情がリアルに描かれており、それを乗り越えて舞台を完成させる難しさや苦しさ、達成感がどんなものなのかが伝わる小説だと思います。

 

私が過去に触れた作品だと、小説のミッドナイトスワンや、映画のブラック・スワンが似たような空気感かなぁと思います。

 

それと、読んでいる途中にふと疑問に思ったことが1つあります。

『この小説、全体としてはとても面白いんだけど、なんか主人公の存在感薄くない!?』

ってこと。

これに関しては1番最後の結末まで読むと理由がわかります。

決して描写の不備などではなくw ちゃんと理由がありました。

バレエ作品『ジゼル』について

本書のタイトルにもなっている『ジゼル』は、クラシックバレエの代表的な演目の1つです。

村娘のジゼルと、貴族の身分を隠してジゼルと恋仲になったアルブレヒトのお話。

本書曰く、主人公が死装束で踊る唯一のバレエらしいです。言われてみれば確かにそうかも知れない。

構成は2幕のみ。

第1幕

身体が弱く、心臓の悪い村娘のジゼル(主人公)。若く、可憐で、踊るのが大好きなジゼル。

恋人は青年・ロイス。

二人は結婚の約束をしているけれど、ジゼルに横恋慕しているヒラリオンは納得できず、ロイスが実は身分を隠していて、貴族であることを突き止めます。

ある日村に、貴族の一行が立ち寄ります。

大公の娘・バチルド姫が暑さで疲れたので休ませてほしいというのです。

ジゼルとバチルド姫は気が合い、お互いの恋人の話で盛り上がりました。

ところがここにヒラリオンとロイスが揃うと恐ろしい方向へ話が進んでいきます。

ジゼルの恋人・ロイスと、バチルド姫の恋人・アルブレヒトは同一人物だったのです。

ヒラリオンはみんなの前でアルブレヒトの身分詐称を暴きました。

ジゼルはロイスにすがりますが、彼はバチルド姫の手を取りキスをします。

ショックのあまり発狂し、ジゼルはそのまま事切れてしまうのでした。

第2幕

真夜中の森の奥にある薄暗い墓地。

そこで跪いているのは、ジゼルに横恋慕していたヒラリオンです。

墓石にはジゼルの名前が刻まれています。

しかし何かの気配を感じ、ヒラリオンは慌てて逃げていきます。

無人の墓地で、真っ白いドレスの乙女が甦ります。

精霊ウィリの女王・ミルタです。

ミルタがローズマリーの枝を一振りすると、白いドレスを身に纏った乙女たちが、墓地から次々に甦ります。

そして最後に、ミルタはジゼルも甦らせました。

すると今度は、花束を抱えたアルブレヒトが墓地へやってきます。

精霊になったジゼルを見て驚き、触れることのできない存在であることに悲しみを募らせます。

辛い現実に打ちひしがれていると、大勢のウィリに囲まれたヒラリオンが現れました。

ヒラリオンは息が上がり、汗だくで、見るからに疲労しているのに踊り続けています。

もう限界だ、助けてほしいと女王・ミルタに懇願しますが冷たくあしらわれ、心臓が破裂しそうになりながらもなお踊り続けます。

そうして最後はミルタに死を宣告され、ウィリの少女たちに沼に落とされてしまいました。

さぁ、次はアルブレヒトの番です。

ミルタはアルブレヒトも踊らせましたが、ジゼルは彼を見捨てることができませんでした。

ミルタに彼を助けてくれるよう懇願し、魔力に抵抗しました。

けれど復讐の女王は男を許さず、生身の肉体が耐えきれぬほどに踊らせ続けます。

アルブレヒトの心臓が限界を迎えようとしたその時、ついに夜明けがやってきました。

夜明けとともにミルタやウィリたちは消えていき、アルブレヒトはギリギリのところで一命をとりとめます。

しかし当然のように、アルブレヒトを庇い助けてくれた、愛しいジゼルも消えてしまったのです。

たった一人取り残されたアルブレヒトは、ジゼルの墓石の前で崩れ落ちました。-完-

 

小説内では、舞台監督がダンサーを集めて、ジゼルのストーリー解釈についてディスカッションするシーンがあり、これが物語の理解を深めるのに大変勉強になります。

バレエとは、『セリフの無いお芝居』です。

演出家によって様々なアレンジが加えられ、舞台セットや衣装だけでなく、音楽やストーリーに至るまで、演じるバレエ団ごとに個性があります。

これからジゼルを演じる予定のある人は、絶対に興味深く読めると思うのでおすすめです。

そんな予定はまるでない私が読んでも、こんなにも面白かったのでw

ジゼルのおすすめ動画

ジゼルって1幕が注目されがちですが、この小説を読むと2幕が観たくなります。

しかしここでは、2幕ではなく1幕の終わりの狂乱のシーンを貼っておきます。

仲睦まじいジゼルとロイスの間に横恋慕のヒラリオンが割り込み、ロイスの嘘が発覚します。

ジゼルの目の前でロイスはアルブレヒトとしてバチルド姫の手にキスをし、ジゼルは発狂して幻覚を見て最後には死んでしまいます。

こうやって文字で書いてみると、本当クソみたいな話だなって思いますw


www.youtube.com

 

ちなみにこの動画のダンサーさんは、私が【世界一のプロバレエダンサー】だと思っているザハロワさんです。

長い手足、優れた柔軟性、優美な動き、どんな役でも踊りこなす演技力。全てを兼ね備えた完璧に近いお方。らぶ。

彼女が演じたジゼルの全幕動画は何度も観ましたが、全幕はさすがに長すぎるのでここに貼るのはやめておきますw

 

そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。

お疲れさまでした!

 

関連記事

daydreaming.hateblo.jp