ついに私も、伊坂幸太郎さんを読む時が来た。
初・伊坂幸太郎さん小説。わーい。
緻密でロマンチックな群像劇。ラッシュライフ
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間にはには歩くバラバラ死体登場。
並走する4つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
誰もが主人公のようで、誰も主人公ではない
この本を口頭で紹介された時、最初は短編連作なのかと思った。
『最後には全部キレイにまとまる』
そう言われたからだ。
ミステリでありがちな、短編連作、伏線回収、最後には驚くべき真実が!?
みたいなやつ。
個人的にはその構成があまり趣味ではないものの、それでも読む気になったのは伊坂幸太郎さんという作家に興味があったから。
私は読んだことがないけれど、人気が高く、読んだ人はみんな面白いと言う。
いつか読みたいとは思っていた。
そんな本を目の前に差し出されたから、ありがたく受け取った。
結論から言うと、結構面白かった。
中々にロマンチックだった。
世界がこんな風だったらいいのにと思った。
それぞれの何気ない日常が交錯して、空の上から見た時にこんな風だったらいい。
でもこんなに沢山の人達が交錯する物語なんて、考えた伊坂幸太郎さんの計算は本当に緻密だなぁと感嘆してしまう。
時系列が微妙にズレているのも巧みだ。
沢山登場する人もいれば、少ししか登場しない人もいる。
交錯の度合いも人それぞれで、それがリアリティを増す要因となっている。
主軸となるストーリーがあるわけではなく、みんなそれぞれに自分の人生を生きているだけ。
だけど自分の知らないところで、自分が誰かの人生に影響を及ぼしている。
それが私の感じたロマンチックの正体。
尚、短編連作は私の早とちり&勘違いで、実際は一編の普通の小説だったw
お気に入りの登場人物
私が1番好きな登場人物は泥棒の黒澤。
口から出任せをペラペラ喋って相手をおちょくったり煙に巻いたりするのは私もやりがちなので、少し気をつけようと思ったw
佐々岡と喋っているシーンは自分が親しい友人と喋っている時みたいでちょっと気持ち悪かったww
しかしながら私は泥棒ではないし、仮に泥棒をやったとしても現場に親切なメモを残す心理はまるで理解できない。
強盗に襲われてもバレてない札束を提供してやるほど親切にはなれないし、泥棒なのに案外お人好しってのは返って生きづらくないのか?という疑問も浮かぶ。
けれどその矛盾がきっとリアリティを増す要因になっている(本日2回目)。
2番めに好きな登場人物は、野良犬。人物じゃないけど。
野良犬の存在感強すぎん??(笑)
いや、そもそも現代の日本に野良犬なんていないんだけどw
しかし野良犬が何かしたかと言えば何もしていない。
ただそこにいるだけ。
強いて言うなら豊田に懐いただけ。
野良犬の存在感を引き立てているのは間違いなく豊田。
豊田が勝手に右往左往しているだけ&勝手に解釈しているだけ。
でもいい。
そのフィルターがいいんだ。
3番めのお気に入りは京子&青山カップル。
私の趣味としてはどっちも嫌いなタイプでそこがまたいい。
京子が膀胱炎に悩んでるのも地味にいいw
青山のゴミっぷりもクソっぷりも、外から見てる分には面白くていい。
そして自分の彼氏がこれだったらと想像すると腹立つw
まぁそんな感じで、登場する人たちが一々濃い。
まともな人どこ行った??
仙台駅の前に立ってた外国人女性くらいか??
ちなみに物語の空気はずっと『曇天』みたいな感じです。
暗くはないけど明るくもない。
雨が降るわけではないけど晴れてもない。
寒くはないけど暑くもない。
たまにはそんなのもいいよね。